いよいよ離陸した家庭用の「3Dテレビ」。出足は好調に推移し,今後も右肩上がりで普及は拡大しそうだ。その3Dテレビで,画質競争が再燃し始めている。課題であるクロストークの発生と明るさの改善に向け,メーカー各社がしのぎを削る。「絵作り」をウリにしてきた国内メーカーには,巻き返しのチャンスといえる。

技術的な課題は大きく二つ

 「市場に投入したばかりだが,売れ行きは予想以上に好調だ」(パナソニック 役員 デジタルAVCマーケティング本部 本部長の西口史郎氏)。

 明日の見えない価格競争から脱するための大型商品とメーカー各社が期待する,3次元(3D)映像を表示可能な「3Dテレビ」が市場に投入されてから半年。テレビ・メーカー各社は,出足の販売状況について,このように口をそろえる。

課題はクロストークと明るさ

 一方,技術面では3Dという新しい競争軸の台頭によって,3D表示時の高画質化という課題がテレビ・メーカー各社に突き付けられている。

 各社が現在,3D映像の表示に採用するのは「フレーム・シーケンシャル方式」と呼ばれる技術である。これは,右目用と左目用のフル HD(1920×1080画素)映像を1フレームごとに切り替えて表示し,これと同期する形でメガネの液晶シャッターで左目と右目の視界を交互に閉ざして,3D映像を表示するものだ。原理的には,120Hz以上で駆動するディスプレイと液晶シャッター搭載の専用メガネ,これらを同期するセンサを用意すれば,“3Dテレビは誰にでも作れる”といえる。

 ただし,3D映像の画質には改善の余地が大きい。消費者がストレスを感じることなく楽しめる3D映像を表示するには,技術力が必要となる。フレーム・シーケンシャル方式には,(1)「クロストーク」の発生と,(2)明るさの低下,という二つの欠点があるためだ。

『日経エレクトロニクス』2010年8月23日号より一部掲載

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