1972年に、いすゞ自動車が日本で初めて導入したテアダウン。今では、日本の製造業における改善手法の一つとして普及した。その一方で、問題点もしばしば見受ける。それは、多くの企業がテアダウンを「分解調査」と呼んでいることに関係する。
確かに、英国出身の作家、アーサー・ヘンリー(Arthur Hailey)の小説『自動車』に紹介されている「Tear Down」や、米General Motors(GM)社のそれを見ると、主たる目的は分解調査にある。だが日本は違う。いすゞ自動車のテアダウンにしろマツダのテェアダウンにしろ、「比較分析」が伴う。そこで、今回はテアダウンの本質の解説から入ろう。
前回(2010年7月号)、テアダウンの導入のいきさつや、いすゞ自動車とマツダの事例を通してテアダウンの技術的なポイントを述べてきた。繰り返しになるが、テアダウンは思考錯誤からスタートして成果の出る形に発展し、改善手法として十分に使えるという自信を得るまでに至った。そうなったとき、私は「テアダウンとは何だ」という定義が必要であると考えた。
その定義とは、「分解した装置や部品、データ類を比較する、(目で見ることによる)比較対照価値分析法」。要は、「(分解した装置や部品、データ類を)比較してその差をつかみ、活用する技術」ということである。
あえて泥くさい表現をしたのは、多くの技術者はとかく机上論を交わし、ともすると現場・現物をないがしろにする傾向があるからだ。逆に言えば、現場・現物への回帰という期待を込め、このように定義したのである。とりわけ、「比較してその差をつかみ…」というくだりが重要と考えている。
〔以下、日経ものづくり2010年8月号に掲載〕
VPM技術研究所 所長