切削技術の進歩により、微細加工に大きな変化が起きている。nm級の微細な形状や面粗さを扱う加工の中でも、0.1μm(100nm)よりも小さな「超微細・精密」な切削加工が既に可能になっており、例えば図のような鏡面加工が現実のものになっている。切削加工の後でみがいて精度を出すのではない。むしろ、研削よりも切削の方が平滑な面が得られる。これまでの常識が逆転しつつあるのだ。

 微細加工は、電気電子や光、エネルギ、医療といったさまざまな分野で、製品の小型化や高機能化、省エネルギを達成する上で、共通して必要とされる技術である。発光ダイオード(LED)用レンズ生産のための金型作製、医療分野や生命科学分野の機器における微細な液体流路の形成、HDDの流体軸受部品の内径切削などが典型例だ。このような加工の実現には多岐にわたる技術の積み重ねが必要であり、市販の装置やシステムのみで実現することは難しい。だが、国内の製造業は世界トップレベルの生産技術を保有しており、微細加工へアプローチする環境は整っている。

 微細加工を実現するにはナノインプリントやレーザ加工、放電加工などさまざまな方法があるが、急速に進歩した高速切削は、今や有力な選択肢になっている(p.60の別掲記事参照)。切削で実現可能な加工精度は飛躍的に高まり、面粗さが1ケタのnm(シングルナノ)であるような高精細な切削面が得られるマシニングセンタ(MC)も登場している。

〔以下、日経ものづくり2010年8月号に掲載〕

図●映り込みのある面を切削加工した例
ソディックが行った。(a)は半径2mm の半球面で、材質はステンレス鋼の一種「STAVAX」(HRC54)、加工時間は1穴当たり40分。(1)→(2)→(3)→(4)の順序で加工。工作機械は「AZ150」、面粗さRaは7~8nm。(b)は平面の切削例で、材質がダイス鋼SKD11相当(HRC60)、面粗さRaは6.0nm。