電気自動車を照準に、日本の部品メーカーや材料メーカーが動き始めた。その状況を端的に表していたのが、2010年6月と7月に相次いで催された2つの展示会「次世代自動車産業展 A-NEXT2010」と「電気自動車開発技術展 EVEX2010」だ。共に「電気自動車元年」ともいわれる2010年に初めて開催されたもの。展示会の規模はまだ小さいが、電気自動車市場のビジネスチャンスを虎視眈々と狙う部品・材料メーカーがブースを構えていた。

 電気自動車に関する報道は増えているし、日産自動車が2010年末に発売する「リーフ」に対する世間の期待も大きいようだ。だが、電気自動車の普及台数は圧倒的に少なく、足元では利益を生むビジネスとは言い難い。

 にもかかわらず、部品・材料メーカーを電気自動車向けの技術開発に突き動かす大きな理由の1つは、危機感だ。例えば、NOKの社員はこう語る。「当社は自動車のエンジン向けに大量のシール材を生産・販売している。もしも電気自動車の時代が来たら、売り上げが大きく減る可能性がある。今から開発を始めておかなければ、手遅れになる」。

 まずは「転ばぬ先のつえ」として開発を進め、行く行くは新たな収益源に育てたい。そんな思いが各社の部品や材料に込められているようだ。

〔以下、日経ものづくり2010年8月号に掲載〕