名古屋工業大学は、補助巻線を使って出力密度を高めた駆動用モータを開発した。補助巻線に流す直流電流の向きを変えることで、永久磁石の磁束を強めたり、弱めたりできる。モータの回転数が低いときは“強め界磁”で出力を高める。一方、回転数が高くなると、“弱め界磁”で逆起電力や鉄損を低らし、効率を高める。

 名古屋工業大学は、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)向けに、出力密度を高めた駆動用モータを開発した(図)。
 出力密度を高めるために、従来のように希土類磁石を多く使うのではなく、ステータ側に補助巻線を追加することで希土類磁石の磁束を補う構造としたのが特徴だ。トヨタ自動車が2005年に発売した「レクサスRX400h」の駆動用モータの磁石量の半分に抑えつつ、同等の出力密度を持たせた。
 駆動用モータの出力やトルクは、希土類磁石の量に比例する。通常は、出力を高めるために、磁石の量を増やすことが多い。しかし、磁石を高温下で減磁しないようにするための添加剤Dy(ディスプロシウム)など、希土類の多くは中国からの輸入に頼っているため、安定して供給されないリスクがあるほか、価格が上がる可能性がある。

以下、『日経Automotive Technology』2010年9月号に掲載
図 開発した駆動用モータの構造
従来の駆動用モータと同様、ロータの外周側にステータを配置する。今回新しいのは、ロータ面を左右から挟みこむように、補助巻線を配置している点である。