鋳物部品メーカーであるコイワイは、RP(ラピッドプロトタイピング)技術を量産品に応用することに取り組んでいる。マスタ型から造るよりも精度を上げられ、結果として薄肉の鋳物ができる。その一環として、Al(アルミニウム)合金を中空に鋳造したサブフレームを試作した。

 車両用、産業用のAl部品の試作鋳物は砂型で造る。試作のような少量生産に金型を使っていては型代が償却できないからである。納期も砂型のほうが短くできる。
 砂型を造る方法として、積層砂型工法と呼ばれる技術が現れた。マスタ型から砂型を造ることはせず、RP装置の一種である積層装置を使って3次元のCADデータから直接砂型を造る(図1)。
 従来の工法に比べて鋳物ができるまでの工期を半減できる。マスタ型がないのだから、その製作にかかる初期コストは要らなくなる。マスタ型から造型、反転するための高度な技術が不要で、より精度の高い自由な形状の砂型を造れる。複雑な形状の鋳型は、普通は分割して造り、接着剤で張り合わせるような熟練の手作業が必要なのだが、積層砂型ならば分割せずに一体で造れる(図2)。
 当社は、自動車をはじめ、船外機、水上バイクなどに使う各種の鋳物部品を製造するメーカーである。素材はAlが中心だ。積層砂型工法に力を入れており、納入した実績もある。これまでは試作品を提供してきた。

以下、『日経Automotive Technology』2010年9月号に掲載
図1 従来の工法(左)と積層砂型工法(右)の比較
図1 従来の工法(左)と積層砂型工法(右)の比較
積層砂型工法は手順が簡単である。
図2 建機の油圧装置の中子
図2 建機の油圧装置の中子
普通は細かく分割し、接着して組み立てるのだが、積層砂型では一体で造れる。