1988年からの米国での義務化によってエアバッグは近年急速に普及した。1990年代以降は、運転席・助手席用だけでなく、サイドエアバッグをはじめ、ニーエアバッグ、サイド・カーテン・エアバッグなどと多様化している。スウェーデンAutoliv社の日本法人オートリブにエアバッグの変遷と今後の方向を聞いた。

 自動車の乗員保護システムとして近年急速に普及したのがエアバッグだ。実はその着想は古く、1950年代に「インフレータブル・エアクッション・コンテナー」として特許が申請されている。最初に実物が登場したのは1967年に米Eaton Yale&Towne社(当時、現Eaton社)が発表してからである。
 その後、米国のビッグ3、ドイツDaimler社など大手自動車メーカーが開発に取り組んだものの、火薬によりガスを発生させてエアバッグを膨らませる仕組みは制御が難しく、発生する音や誤作動など課題が山積していた。
 本格的に普及が始まったのは、NHTSA(米国高速道路交通安全局)によって衝突時の乗員保護基準である「FMVSS 208」が制定されてから。1984年に最終案が出され、1988年9月からエアバッグまたは自動装着シートベルトのどちらかが義務付けられた。その後、エアバッグの普及が加速し、1990年代以降はサイドエアバッグをはじめ様々な種類が実用化されている(図)。FMVSS 208では1997年9月からエアバッグ単独の義務化が決定。なお、国産車では1987年にホンダ「レジェンド」で搭載が始まった。

以下、『日経Automotive Technology』2010年9月号に掲載
図 スウェーデンAutoliv社のエアバッグの進化
1980年にエアバッグを生産開始し、1990年代以降バリエーションが多様化している。