研究者の視点
明治大学国際日本学部 准教授 呉在烜氏
高岡短期大学(現富山大学)准教授、東京大学ものづくり経営研究センター特任准教授などを経て2008年4月から現職。韓国企業の動向に詳しい。

 韓国Hyundai Motor社の勢いが止まらない。1999年に同Kia Motors社を買収したときに200万台弱だった世界販売台数は、10年後の2009年に460万台を超え、2010年は540万台を目標に据えている。韓国国内市場で圧倒的な市場ポジションを確立し、先進国市場で販売台数を伸ばし続け、さらには中国やインドなどの新興国で市場シェア上位の地位を獲得している。いまや、Hyundai社は日本メーカーにとって最大のライバルに成長した感がある。
 Hyundai社の躍進要因として、韓国市場でほぼ独占的な地位を確立したことによる安定的な収益源の確保や、ウォン安による為替差益効果などがよく指摘される。これらに加え、同社の躍進を支える要因として筆者は、グローバル市場、とりわけ新興国市場で高いコスト競争力を発揮していることを指摘したい。もちろん、2000年代の長期にわたるウォン安という好条件が輸出車の価格競争力を押し上げたことは事実である。しかし海外工場のコスト競争力はどのように説明できるだろうか。

以下、『日経Automotive Technology』2010年9月号に掲載