新興国での需要増を背景に、回復基調にある日本の自動車産業。しかし、早稲田大学の野口悠紀雄氏は、新興国市場への傾斜や電気自動車への移行が、日本の自動車産業に大きな試練を招くと警告する。(聞き手は鶴原吉郎)

早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授 野口 悠紀雄氏

 日本の自動車産業はこれから大きな試練にさらされるだろう。まず数カ月以内に顕在化すると考えられるのが国内の過剰生産能力の問題だ。新車の購入補助金は半年間延長されたが、ことしの秋で打ち切られる。補助金で支えられた需要は、しょせん先食いに過ぎないのだから、国内の新車販売は大きく落ち込むだろう。すでに補助金が打ち切られたドイツでは、その反動で販売台数が3~4割も落ち込んだ。日本でも同じことが起こるだろう。そうなれば、過剰生産能力の問題が大きくクローズアップされてくる。
 すでにこの問題は、米国では1990年代に起きている。私は2004年ごろに米カリフォルニア州に住んでいたが、かつての自動車工場の跡地が巨大なショッピングセンターになっているのをいくつも見た。日本でもこうした跡地利用を真剣に考えなくてはならない。

以下、『日経Automotive Technology』2010年9月号に掲載