本田技術研究所は、同社が車載ソフト開発でバーチャルビークルを導入したことを、dSPACE Japanのユーザー会で初めて明らかにした。バーチャルビークルは車両1台分のECUを組み合わせた統合試験が可能なHILS(Hardwarein the Loop Simulation)システム。バーチャルビークルの導入を明らかにしたのは、三菱自動車に次いで2社目である。

 このほか、今回のユーザー会ではいすゞ中央研究所がカムを使わないバルブ駆動システムの開発にdSPACEのラピッドプロトタイピング装置を活用した事例を、三菱自動車がソフトウエアの要求仕様書を改善した取り組み事例を、それぞれ紹介した。
 本田技術研究所がバーチャルビークルを導入したのは、車載システムの高機能化/複雑化に対応するため。車載ECU(電子制御ユニット)の仕様の複雑化に伴って、開発工数は膨れ上がっている。その一方で、開発人員を増やすのは難しく、コスト削減、期間短縮の要求も厳しい。もちろん不具合を出すことは許されない。こうした相反する要求に応えるツールとして導入したのがバーチャルビークルである。
 導入したバーチャルビークルは、七つのラックに収められたHILSから構成される。それぞれのラックに収められたHILSが、パワートレーン、ブレーキ、ボディ系など部位別のシミュレーションを担当する。このHILSに、車両の挙動を表示する「MotionDesk」、車両モデルのダウンロードやHILSの手動操作を実行する「ControlDesk」、テストを自動的に実行する「AutomationDesk」などのツールを組み合わせる。(図)

以下、『日経Automotive Technology』2010年9月号に掲載
図 本田技術研究所が導入したバーチャルビークルのシステム概要
七つのラックに納められたHILSと、その周辺のシステムから成る。