製造派遣や登録型派遣、さらに短期派遣の禁止を含んだ派遣法改正が国会で議論されつつある。しかし、派遣にかかわる社会問題の原因が、(1)派遣労働の仕組み自体による、(2)仕組みでなく現行の派遣法の不備による、(3)法律が守られていないことによる、(4)働く人と、派遣という働き方の間のミスマッチによる、など複数あるにもかかわらず、その原因に沿った議論がなされていない。

 例えば、短期派遣による社会問題のほとんどは、その仕組み自体でなく、法順守の問題や、働く人と働き方のミスマッチが原因である。短期派遣の就業者はいわゆるフリーターだけでなく、大学生や主婦、正社員(副業として)が相当数を占めており、短時間であっても定期的な勤務には就きにくい人や、時間があるときにだけ働きたい人が選択している。一方、短期派遣を活用するユーザー企業は、派遣会社に依頼すれば短期間でも人材を確保できる。

〔以下、日経ものづくり2010年7月号に掲載〕

イラスト:城芽ハヤト

佐藤博樹(さとう・ひろき)
東京大学社会科学研究所 教授
1953年生まれ。1981年一橋大学大学院社会学研究科にて博士課程単位修得退学。1981年に雇用職業総合研究所(当時)に入所。法政大学助教授、教授を経て1996年から現職。著書多数。近編著書に『実証研究日本の人材ビジネス』がある。