3次元CADを導入したが、なかなか開発プロセスの効率化が進まない──。そう悩んでいる企業は少なくない。この悩みは、新しい機能を持ったツールを導入したからといって解決するものではない。3次元設計に取り組んではいるが、十分な効果が得られていない企業の体質のどこに問題があるかを分析し、その結果に応じた改善方法を選択できるスキルを、本コラムでは伝授します。

 前回(2010年6月号)は、3次元設計の強固な基盤づくりとして、3次元モデルの作り方を統一することについて説明した。これは、3次元モデルを新規に作成する作業だけではなく、3次元モデルを流用・修正する作業の効率化も目的としたものだ。3次元モデルを設計意図や技術/ノウハウを格納する器、つまり3次元設計プロセスにおける共通言語として使うために必要不可欠な取り組みである。

 今回は、この基盤づくりの次に取り組むべき活動テーマについて解説する(表)。ポイントは、(1)どのようなプロセス(手法/手順)で3次元設計を進めるか、(2)そのようなプロセスを定着させるには技術者に対してどのような教育を実施するか、の2つ。これで3次元設計プロセスの定着を目指す。

 とりわけ、連載の第1回と第2回(2010年4、5月号)で紹介したプチアセスメントの結果が、「導入失敗型」「脆弱基盤型」「製品視点の改革先行型」といった活動類型に分類された場合は、まず間違いなくこういった取り組みが必要だ。「環境構築途上型」「製品視点の改革先行型」と分類された場合でも、有効な取り組みになる可能性がある。

〔以下、日経ものづくり2010年7月号に掲載〕

表●3次元設計をベースとした開発プロセス構築に向けた取り組み
グループA、Bの取り組みによって3次元設計の基盤を整備したことで、3次元設計の効果を得るための具体的な活動(グループC~H)を開始できる。今回は、グループCの取り組みを解説する。
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待寺裕一(まちでら・ゆういち)
O2 技術ディビジョン コンサルタント
コンピュータ周辺機器メーカーでのメカ設計・開発、3次元CADベンダーでのコンサルタントを経て、O2へ参画。さまざまな製品の3次元設計手法の構築に携わり、3次元CADシステムの導入から定着化の実績を持つ。O2では、対象となる3次元CADを拡大し、コンサルティングの範囲を広げている。
O2(http://www.o2o2.co.jp/)は、設計開発領域を専門とするプロ集団。業務プロセス改革から高度な技術課題解決までを総合支援。3D-DPRMなど独自の方法論を提唱し続ける。