電気自動車(EV)の普及の試金石として,日産自動車の新型EV「リーフ」が注目を集めている。多くの自動車関係者や電池関係者が今,その予約状況に耳目を傾ける。欧州や中国では,EVに対する優遇策が政府や自治体から相次ぎ,これまでEVに懐疑的だった自動車メーカーも提携を結ぶなど,徐々に動きだしている。車載用電池の国際会議「AABC 2010」に参加し,その動向を探った。

電動車両をめぐって複雑化する提携関係

 「日産-Renaultグループは,2012年に電気自動車(EV)を年間50万台販売する」(日産自動車 社長兼CEOのCarlos Ghosn氏)──。日産自動車が2010年12月,満を持して発売するEV「リーフ」。その予約状況を,多くの自動車関係者が固唾をのんで見守っている。それもそのはず。リーフの売れ行き次第では,各社ともハイブリッド車(HEV)を中心に据えた現状の商品戦略を,大幅に見直す必要に迫られかねないためだ。

 こうした中,日産自動車は2010年6月7日に,日本での予約が2カ月で6000台を超え,2010年度に予定していた日本での目標販売台数に達したことを発表した。米国でも1万3000台を超える予約があるという。

 日産自動車では当初の計画通り,年間5万台の生産体制を日本で確立する。さらに,2012年から米国でリーフを年間15万台体制で生産するため,電池の生産工場を含め,工場建設を2010年5月に着工した。欧州ではフランスRenault SAと共同で,ポルトガル,フランス,英国でEV用のLiイオン2次電池の生産を開始すると表明しており,年間50万台の生産体制の構築に向けて邁進する方針だ。

 日産自動車が,ここまでEVに対して強気な計画を遂行する背景には,日産-Renaultグループが政府や自治体と密に連携を取り,EVへの補助金などの優遇制度の確立や,自治体を巻き込んだインフラ整備を進めていることにある。しかも,欧州や日本,米国といった先進国だけでなく,世界最大の自動車市場となった中国でもEV優遇策が広がりつつある。

Daimlerやトヨタも方針変換か

 EVへの優遇策が充実してきたことを受けて,EVに対する自動車メーカー間の資本提携や技術提携が活発化してきた。驚くべきことに,これまで常に自前主義を貫いてきたトヨタ自動車までが,高級EVのベンチャー企業である米Tesla Motors,Inc.に5000万米ドル(約45億円)を出資すると発表した。

『日経エレクトロニクス』2010年6月28日号より一部掲載

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