2010年5月23~28日,世界最大のディスプレイ関連の国際会議「SID 2010」が開催された。参加者は前回に比べて25%程度増加し,活気が戻ったといえる。現在,FPD業界全体は閉塞感が漂っている状況だ。“王様”として君臨する液晶パネルはあらゆる機器への搭載が進み,FPD産業は成熟期を迎えつつあるが,さらに進化させる方向が見えていない。今回のSIDでは,フレキシブル・ディスプレイを筆頭に,次世代技術が続々と登場した。FPD業界の閉塞感の打破に向けたこれらの技術に,技術者の視線が集まった。

有機TFT,酸化物半導体TFT,電子ペーパーに沸く

 成熟期を迎えつつあるFPD産業の将来を牽引する技術は何か──。

 2010年5月23~28日に米国シアトルで開催された,ディスプレイ関連で世界最大の国際会議「48th SID International Symposium, Seminar & Exhibition」(以下,SID 2010)には,将来の牽引役となるディスプレイ技術を見極めようと,多くの技術者が押し寄せた。SID事務局によるとSID 2010の参加者は約6000人であり,前回の約4800人に対して25%程度増加したという。経済不況や新型インフルエンザの流行などの影響で,参加者が激減した前回に比べて活気が戻ったといえる。

 現在,ディスプレイ産業を牽引すると期待される技術の一つが,3次元(3D)映像である。2010年に入り,大手テレビ・メーカー各社が「3Dテレビ」を発売し,早くも競争が激化しつつある。SID 2010の展示会場では,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.や韓国LG Display Co.,Ltd.といった大手パネル・メーカーの展示ブースに3D対応ディスプレイがズラリと並んだ。SID 2010のビジネス・カンファレンスでは,米Sony Electronics Inc.,President and Chief Operating OfficerのStan Glasgow氏が基調講演に登壇し,「3D映像対応機の投入は大きな挑戦だが,成功する自信がある」と宣言するなど,メーカー各社の3D映像に対する意気込みは強い。

数年先の要素技術に熱視線

 このような世間の盛り上がりとは対照的に,SID 2010で注目を集めた技術は3D映像ではなかった。技術者の視線は,もはや3D対応ディスプレイの次にある。数年先の実用化を目指した三つのディスプレイ技術である。(1)有機TFT,(2)酸化物半導体TFT,(3)電子ペーパーだ(図)。

『日経エレクトロニクス』2010年6月28日号より一部掲載

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