写真:栗原克己

 僕が社長になったのは、2005年1月。ちょうど、前年の大量リコール問題で会社が沈んでいる時でした。だから、とにかく何かしなきゃいけない、全員で将来に向かって、夢のあるものに向かって突き進まなければいけないという思いが強くありました。

 考えてみると、僕らのような規模の会社が生きていくためには、世界に通用する独自技術を持たなければいけない。ものすごく挑戦的なことをしなければいけないんです。もちろん、今の技術の延長線上にある改良や改善を否定する気は毛頭ありませんよ。ただ、人と違うことをやる、独自の技術を持つというときには、発想の転換や今を否定する勇気が必要になるんです。しかも、世界一の頂点技術を目指すことになれば、開発する人も製造する人もみんな高い志と熱い情熱を持って臨んでくれる。だからこそ、僕は宣言したんです、「(僕らは)電気自動車でいく」と。社長就任から半年後の6月のことでした。
〔以下、日経ものづくり2010年7月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

益子 修(ますこ・おさむ)
三菱自動車工業 取締役社長
1949年2月生まれ。1972年3月早稲田大学政治経済学部卒業、同年4月三菱商事入社。1997年6月インドネシアKTB社チーフアドバイザー、2002年4月自動車第一ユニットユニットマネージャー、2003年4月執行役員自動車事業本部長と、一貫して自動車畑を歩む。2004年6月三菱自動車工業代表取締役常務海外事業統括、2005年1月代表取締役社長COO兼CBEO兼海外事業統括兼アセアン本部長、2007年10月取締役社長、現在に至る。ラグビー観戦やスーパー銭湯巡りで、仕事の疲れを癒やす。