Sony Ericsson社の「Xperia X10」や,Microsoft社の「KIN」など,インターネットのソーシャル・サービスへの対応を前面に打ち出した携帯電話機が続々と登場している。SNSや写真共有といったWebサービスとの連携機能を強化している点が特徴だ。背景には,ソーシャル・サービスが高収益の「金の卵」になる可能性が見えてきたことがある。携帯電話分野での流れは,今後のWeb家電の技術牽引役となる新たなうねりを引き起こしそうだ。

携帯電話機とソーシャル・サービスがWeb家電を先導

 日スウェーデン合弁のSony Ericsson Mobile Communications ABが,2010年春に世界市場に投入したスマートフォン「Xperia X10」。約70カ国で発売(同年6月時点)され,好調な販売を続ける同社の意欲作だ。日本の開発チームでソフトウエア開発を統括した同社の川上高氏(Tokyo Engineering ソフトウェア部門 ソフトウェア開発2部 担当部長)は,開発当初に欧米の開発チームが出してきた提案に驚いた。携帯電話機の“顔”となる機能を,従来の常識から大きく変更しようという案だったからだ。

 Xperiaの特徴は,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や写真共有サービスなど,インターネットのソーシャル・サービスと連携する独自機能にある。一歩踏み込んだのは,ソーシャル・サービスを使ったユーザー同士の交流の履歴を,着信履歴や電子メールと同じ枠組みで統合管理できるようにした点だ。サービスごとにアプリケーション・ソフトウエアを切り替えることなく,これらの履歴を同じ時間軸で並べて表示したり,知人ごとに集めて整理したりできる機能を,ユーザー・インタフェース(UI)の主軸に据えた。

 Xperiaだけではない。ここにきて,ソーシャル・サービスへの対応を前面に押し出した携帯電話機が続々と登場している。いずれも,SNSや写真共有サイトへの投稿を待ち受け画面に表示する機能などを充実させていることが特徴だ。携帯電話機と同様の“ソーシャル化”の動きは,テレビでも進行中である。近い将来,デジタル・カメラなど他の分野にも,この波は押し寄せることになるだろう。携帯電話機での取り組みは,脱売り切りを目指す家電メーカーの先行指標になりそうだ。

『日経エレクトロニクス』2010年6月14日号より一部掲載

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