電子ペーパーのカラー化の動きが加速している。ところが,その行く手にはイバラの道が待ち構えている。Apple社の「iPad」の登場によって,カラーの表現力に長ける液晶パネルとの対比を余儀なくされるからだ。市場が下す評価は,電子ペーパーの今後の行方を大きく左右しそうだ。

カラー電子ペーパーが相次ぎ市場に

 2010年後半以降,カラー表示が可能な複数の電子ペーパーが,相次いで市場に登場する。これまでは,実質的にモノクロ表示の電子ペーパーしか実用化されていなかったが,その状況がガラリと変わり始める。

 中でも最もインパクトが大きいのが,米E Ink Corp.のカラー電子ペーパーの登場だ。同社のモノクロ電子ペーパーは現在,米Amazon.com,Inc.の「Kindle」やソニーの「Reader」をはじめ,世界で販売されているほとんどの電子書籍端末に使われている。その電子ペーパーのカラー版が,いよいよ市場に姿を現すというわけだ。

 2010年5月末に米国シアトルで開催された「SID 2010」で,E Ink社は最新のカラー電子ペーパーの試作品を披露した。「以前の試作品に比べ,格段に見栄えが良くなった」(電子ペーパーに詳しい業界関係者)という声も聞かれるなど,市場投入を目前に完成度も高まりつつあるようだ。同社の親会社である台湾Prime View International Co., Ltd.(PVI社)は,「9.7型と6型のカラー電子ペーパー・モジュールのサンプルが,近く提供可能になる」(ハイディス・ジャパン)としている。

 E Ink社以外のカラー電子ペーパーも続々と出てくる。これら2010年後半以降に登場するカラー電子ペーパーに対して市場が下す評価は,「今後の電子ペーパーの行方を左右する」(ある業界関係者)。カラー電子ペーパーが市場で受け入れられるか否かによって,電子ペーパーの将来の市場規模が大きく変わってくる可能性があるからだ。

『日経エレクトロニクス』2010年6月14日号より一部掲載

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