「iPad」発表における驚きの一つは,新型マイクロプロセサ「A4」の採用だった。Apple社があえて「我々が設計した次世代のSoC」とアピールするA4はこれまでの「iPhone」シリーズに使われてきたマイクロプロセサと,どう違うのか。分解したiPadのA4を,総力を挙げて解析する。

 Apple社のロゴマークが目立つA4は,531端子で大きさは約14mm角。このパッケージに収められていたのは,約7.3mm角のダイである。このダイには,CPUコア,2チャネルのメモリ・インタフェース,グラフィックス描画処理,音声および映像のコーデックを担うとみられる回路が集積されている。PLLや,各種の入出力インタフェースに対応するためのアナログ回路らしきものも見受けられる。

 A4は,Samsung社が45nm世代のCMOS技術で製造したとみて間違いなさそうだ。ダイにはパッケージ面と同じ「APL0398B01」という型番が記されていることが分かるものの,企業名を示す刻印は見当たらない。それでもSamsung社の45nm品と推定できるのは,配線とともに形成されたパターン(模様)に手掛かりがあるからだ。「ダイの四隅には,製造業者のプロセス世代ごとに独特なパターンを描くのが一般的だ。このダイに作られたパターンはSamsung社の90nm品や65nm品とよく似ているが,微妙に異なる。消去法で考えていくと,Samsung社の45nm品という結論に至る」(解析協力者)。

DRAMとのPoP構造で実装

 本誌は,A4の実装面での特徴も探ってみた。A4はDRAMをPoP(package on package)構造で重ねており,プリント基板に実装された状態でもパッケージが2層に分かれている様子を観察できる。これは,断面を見ると一目瞭然だ。

『日経エレクトロニクス』2010年6月14日号より一部掲載

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