伝送には簡易版技術を利用

 「2020年に衛星放送用の21GHz帯の電波を用いた,スーパーハイビジョン(SHV)の試験放送をするのが大目標」──。NHK放送技術研究所 所長の久保田啓一氏は,2010年5月に開催した「技研公開2010」でこう宣言した。展示でも,撮影技術,符号化技術,各種伝送技術,そして表示技術までの一連の要素技術の開発状況を詳細に示した。これまで要素技術を部分的に示すだけだったSHVの全貌が,初めて見えてきた格好になった。

「フル解像度」の映像を初公開

 NHK技研は今回の技研公開で,SHV本来の仕様を満たしたカメラを完成させ,出展した。このカメラを2009年に開発したプロジェクターなどに直結することで,シームレスな「フル解像度」の映像も初披露した。

 過去の技研公開でも「SHVの映像」は展示されていたが,実際には「画素ずらし(Dual Green)」方式という簡易版の映像だった。フル解像度のSHVの総画素数が,約9950万画素(7680×4320画素×RGB,8K×4K)であるのに対し,画素ずらし方式では同3320万画素しかない。今回初めて,撮影技術と表示技術がフル解像度に,共に対応したのである。

『日経エレクトロニクス』2010年6月14日号より一部掲載

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