パソコン市場にかつてのような急成長が見込めなくなる中,組み込み機器はIntel社の成長の鍵を握る分野といえる。Intel社が2010年4月に中国・北京で開催した「Intel Developer Forum 2010 Beijing」で打ち出したのは,中国という巨大な国を足掛かりに同社の組み込み機器分野の事業を軌道に乗せる戦略だった。

組み込み機器市場に向け新方針打ち出す

 「By China, For China」(中国の手で,中国のために)──。「Intel Developer Forum 2010 Beijing」(以下,IDF北京)で米Intel Corp.が強く訴えたのは,巨大な中国市場に向けた製品や技術を中国で生み出していくという方針だ。

そこには,中国の市場とメーカーがIntel社の将来に向けた成長エンジンになるとの期待がある。同社は,中国に設置した研究所を組み込み機器分野の先進的な研究開発組織と位置付けるとともに,中国のメーカーによる組み込み機器開発を支援する方策を打ち出した。

 「Intel Labs China(以下,ILC)での研究を,先進的な組み込み機器の分野に特化する」(Intel社 Vice President, Director, Intel Labs, Intel Chief Technology OfficerのJustin Rattner氏)。2009年10月に中国の研究開発拠点であるILCを立ち上げたIntel社は,今回のIDF北京でこう表明した。

中国の研究所を組み込みに特化

 ILCの設立当初はクラウド・コンピューティングやゲーム,ヘルスケアなどさまざまな分野について研究の可能性を検討してきたが,「中国市場に向けた技術を中国で生み出すという方針の下に決定した」(Rattner氏)。ILCは今後,中国のメーカーや研究機関などと協力しながら,将来の組み込み機器に求められる技術の研究や実用化を推進していく。

『日経エレクトロニクス』2010年5月17日号より一部掲載

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