鋼より熱伝導率が高く耐熱温度が低いアルミニウム合金は、エンジンや排気管の熱から部品を守る遮熱板には不向きに見える。しかし、伝熱機構をよく考え「輻射が勝負」だということに気づけば、実は向いていることが分かる。これで質量を鋼板の1/5にできる。

 樹脂部品が120℃、ゴムも120℃、ECU(電子制御ユニット)はケースの表面にして80℃、オルタネータは磁石温度にして80℃、油は120℃で劣化、200℃で炭化。エンジンルームの中には熱に弱いものがたくさんある。
 一方、エンジンの中では燃料が激しく燃えている。排気マニホールドは普通の自然吸気エンジンで800℃、軽自動車用でも600℃…クルマのエンジンルームは“温度差”の激しい世界である。遮熱板を使って“加害者”と“被害者”を隔離しておかないと、お互いうまく機能しない。
 当社は、米Federal-Mogul社が開発したカバー用の素材「Nimbus G2」を排気系高温部品の積層遮熱板として使う用途開発をした。「Nimbus G2」はAl(アルミニウム)合金板を2枚重ね、折り込んで波板状にしたもの。従来から使われている、2枚の鋼板の間に断熱材を挟んだ製品に対して面積当たりの質量を1/5にできる。
 すでに、ダイハツ工業の複数の軽自動車で採用実積がある。スズキは乗用車「キザシ」のエンジンで排気マニホールドに採用した(図)。

以下,『日経Automotive Technology』2010年7月号に掲載
図 スズキ「キザシ」のエンジン
排気マニホールドを積層遮熱板が取り囲む。