コンサルタントの視点
A.T. カーニー パートナー 川原英司氏
東京大学卒業後、日産自動車、三菱総合研究所を経て1998年にA.T. カーニー入社。自動車関連のテーマを中心に様々な企業の経営コンサルティングを手がけている。

 自動車産業は現在、様々な経営環境の変化に直面し、経営課題が山積している。いわゆる「リーマンショック」により、それまで世界市場での成長を支えてきた生産能力が一気に固定費となって収益を圧迫している。加えて最近の「品質問題」では、海外市場において真のインサイダーとして認められることや、ソフトウエア品質を管理することの難しさを痛感させられた。
 中長期的に見ても、様々な環境技術や、市場ニーズの多様化に対応するための開発負担は増加する一方である。なかでも、これまでの常識を超えたクルマ作りや新たな社会システムへの発展につながる可能性を秘めた「EV(電気自動車)化」の潮流は、その将来が不透明な中で、大胆な投資を必要とする。新興市場の成長は、機会であると同時に、「超低価格車」などの新たな商品カテゴリーへの挑戦も要求する。
 このような変化を乗り切るために、Renault-日産とDaimler社の提携など「戦略提携」の動きも活発化しており、自社をどう戦略的に位置づけるか、他社を含めどう最適化するかがますます重要になっている。

以下,『日経Automotive Technology』2010年7月号に掲載