欧州ジャーナリストの視点
フリーランス・ジャーナリスト Ian Adcock氏
英国在住。『What Car』『Autocar』『Motor』などの自動車専門誌の編集者を経て、1980年からフリーに。自動車技術専門誌の『European Automotive Design』誌に寄稿するなど技術にも詳しい。

 ドイツDaimler社とRenault-日産グループの提携は、一見奇妙な同盟関係に映る。Daimler社が以前、米Chrysler社や三菱自動車との資本提携で手ひどい失敗をしたことを考えれば、なおさらのことだろう。しかし、少し考えてみればこの提携が、3社にとってwin-winの関係だということが分かる。
 三つのブランドは、それぞれ自社の製品ポートフォリオの弱点を、他のブランドの助けを借りることによって克服することができる。例えばDaimler社は2015年の燃費規制を達成するために、企業平均燃費を引き下げることを迫られている。しかし同社は大型車の技術では非常に優れているが、「A-Class」や「smart」のような小さなクルマでは製造コストがかかりすぎるという問題を抱えている。そこに、Renault社が協力する意味がある。
 Renault社の次期「Twingo」は、smartと共通のリアエンジンのプラットフォームを使う。これにより、Daimler社はHambach工場で製造するsmartの製品ラインアップを拡充し、製造コストも引き下げることができる。

以下,『日経Automotive Technology』2010年7月号に掲載