樹脂と金属を強固に一体成形する技術の本格的な実用化が近づいている。これまでのインサート成形と異なり、接合の密閉性・信頼性が大幅に高いのが特徴。まず車載電子部品の分野で応用が拡大しそうだ。

 自動車の電子化に伴って増え続けるECU(電子制御ユニット)。自動車の軽量化に対する要求が強まるのに伴い、ECUの増加による質量増にも厳しい目が向けられるようになってきた。通常Al(アルミニウム)合金ダイカスト製である、ECUハウジングの質量がかさむようになってきたからだ。
 こうした中、Alダイカストと樹脂を一体化したECUハウジングを採用する動きが出てきた(図)。ある自動車メーカーがこれまで一部車種で採用してきたが、信頼性が確認できたとして、今後採用を広げていく方針を固めたからだ。従来のAlダイカスト製に比べて軽量化・コスト削減が可能になるのがメリットである。
 これまで、エンジンルーム内で使われるECUのハウジングにAlダイカスト製が使われてきたのは、エンジンルーム内の高温に耐える耐熱性が要求される一方で、ECU内部の半導体が発する熱を外に逃がす放熱性も要求されるためだ。さらに、水やほこりなどが内部に浸入しない密閉性も求められる。その一方で、なるべく軽くしたい。こうした条件を最もよく満たす材料が、これまではAlダイカスト製だった。

樹脂の成形自由度生かす

 これに対し、自動車メーカーが採用を広げようとしている樹脂とAlダイカストを一体化したハウジングは、半導体などを搭載し、放熱性が要求される部分はAlダイカスト製、その周囲の、複雑な形状が要求される部分は30質量%のガラス繊維で強化したエンジニアリングプラスチックのPBT(ポリブチレンテレフタレート)製と使い分けているのが特徴だ。
 ECUハウジングは、単純に言うと「弁当箱」のような形をしている。弁当箱の本体に、半導体を搭載した基板を入れ、フタを閉めて密封する。外部から水やほこりが入らないように、合わせ目の部分はきっちりとシールしなければならない。一方で、外部の温度変化に対応して、ECU内部の空気の体積も変化するので、空気だけを通す通気穴が必要だ。

以下,『日経Automotive Technology』2010年7月号に掲載
図 Alダイカストと樹脂を一体成型したECUハウジング
放熱性が要求される底面部分はAl、複雑形状が要求される側面は樹脂製とした。フィンの付いたAlダイカスト板(上左)を黒アルマイト処理(上中央)し、金型内に入れてインサート成形する(上右)。