モノづくりは人づくり。どの企業でも真っ先に聞かれる言葉だ。しかし、開発期間の短縮、車種対応の増加によって、日々の業務をこなすだけになっていないだろうか。さらに、電動化によって大きく変化するクルマでは、新しいシステムや構造を発想する挑戦的な技術者が求められる。部品メーカー各社の人材育成術を探る。

 最近、自動車業界でよく耳にするのが、技術者のレベル低下を懸念する声だ。もちろん定量的な分析があるわけではない。しかし、「言われたことはやるが積極性が足りない」「能力差が大きい」「コミュニケーション能力が低い」と、一様に懸念を述べる。
 自動車技術会で教育を担当する東京大学高齢社会総合研究機構機構長、教授の鎌田実氏も、「自動車業界から大学にもっとよい学生を育ててくれというプレッシャーが強い」と語る。
 個人差をなくして全体のレベルをアップし、さらには将来の問題を先回りして解決したり、新しい事業や製品の開発で貢献してほしい。これが企業が技術者に求める姿だ。いうなれば、新しいことに果敢に挑戦する技術者である(図)。
 挑戦力を持つ技術者を育てるにはどうしたらよいか。もちろん様々な方法があるが、大事なのは挑戦できる場を与えることだ。これは口で言うのは簡単だが、なかなか難しい。実際の業務では挑戦も必要だが、失敗せずに効率よくこなすことが求められる。本業で挑戦ばかりさせるわけにはいかない。

以下,『日経Automotive Technology』2010年7月号に掲載
図 自動車業界の技術者に求められる力