北米を中心に,テレビのコモディティー化が大きく進んでいる。コモディティー化の進展は「テレビのパソコン化」を引き起こす。この流れに乗ってパソコン業界のメーカーはテレビ業界への進出を狙う。Intel社のAtomを搭載した初めてのテレビ「ROBRO-TV」を分解した。

コモディティー化を象徴する
Googleの参入とMediaTekの台頭

テレビがネットワークに対応することでパソコン化が進む

 薄型テレビは家電の華である。各メーカーは最新技術を投入し,高画質化や3次元(3D)対応などを競っている。一方で,ネットワーク化の進展によってテレビの性質は大きく変化しつつある。それを象徴する二つのニュースが,2010年2~3月に世界を駆け巡った。

 2010年2月22日,米Wal-Mart Stores, Inc.がオンライン映画レンタルを手掛ける米VUDU, Inc.の買収を発表した。「安いテレビを売ることしか念頭にない」と思われていたWal-Mart社が,ネットワーク化したテレビで重要になるコンテンツ提供サービスに乗りだしたことは,テレビ業界に衝撃を与えた。

 さらに大きなニュースが米Google Inc.の参入である。2010年3月17日,米New York Timesは「Google社と米Intel Corp.,ソニーが共同で,『Google TV』と呼ばれるテレビ/セットトップ・ボックス向けプラットフォームを開発中」と報じたのだ。OSとしてGoogle社を中心に開発している「Android」,マイクロプロセサとしてIntel社の「Atom」を搭載し,Webサイトの閲覧が可能なテレビだという。Google社は,Androidによってネット機器をコモディティー化することで,世界中のネット接続ユーザーを増やし,広告収入を増加させるという戦略を採っている。一連の動きは今後,テレビのネットワーク化が進むことを意味する。

パソコンを抱えるROBRO-TV
分解で見えた実像

オリオン電機の従来の19型テレビとROBRO-TVを比較

 「ROBRO-TV」は,Intel社のネットブック向けマイクロプロセサ「Atom N270」と米Microsoft Corp.のOS「Windows Embedded」を搭載したインターネット・テレビである。カデンザ,ドウシシャ,オリオン電機の3社が共同で開発した。画面寸法は19型で,価格は6万9800円である。

 ROBRO-TVには大きく三つの特徴がある。最初の特徴は,リモコンを意識したインタフェースだ。Webサイトにもテレビ局と同様にチャンネル番号が割り振られており,リモコンによるメニュー選択や数字の直接入力により,Webサイトを表示できる。また,Webページに表示されるリンクにも番号が割り振られる。

『日経エレクトロニクス』2010年5月3日号より一部掲載

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