のっけから厳しいことを言うようで恐縮だが、最近の設計者は創造性に欠ける、あるいは創造力が落ちていると言わざるを得ない。その一方で、何とか良いものを造ろうと努力していることもまた事実だ。仕様に合わせて寸法や容量を機械的に決めていくだけではなく、ユーザーを考慮して少しでも使い勝手を高めようと工夫している。いずれにせよ、設計者は日々新しい図面を描き、新しい製品が次々と生み出されていく。
こうした設計という仕事に対し、設計者はおおよそ次のような意識を持って臨んでいるに違いない。
- 新しい製品はきっと売れる(と信じる、あるいは思い込む)
- 使用機能を高めたり、時代のセンスを取り入れたり(よりカッコいい製品を創ったり)、さらには性能・出力で他社を圧倒したりすることで、機能的に競争力のある製品を創れる
- 設計変更によって新規性や差異感をアピールできる
- コスト的な競争力を高める
- 新たなレイアウトへの対応を可能にする
- 類似製品がない、全く新しい製品を創造する
いずれも、設計者の意識、あるいは心構えとしては正しい。ただし、だ。結果論として、こうして生み出されたものが企業にとって部分最適であって、全体最適ではないことが間々ある。前回(2010年4月号)指摘したのは、まさにこのことだ。
〔以下、日経ものづくり2010年5月号に掲載〕
VPM技術研究所 所長