東洋紡は2010年4月14日、敦賀事業所(福井県)において全体最適を狙った革新手法を本格的に導入する「生産革新活動キックオフ大会」を開催した。同事業所だけで2015年までに、数十億円規模のコスト削減を目指す。導入するのは、ダイセル化学工業で1996年ごろから体系化されてきた「ダイセル生産方式」(以下、ダイセル式)。生産現場で発生するムダを排除する従来のカイゼン活動とは異なり、改革当初から間接部門や技術部門を巻き込みながら事業所全体で活動を展開する点が特徴だ。

 東洋紡敦賀事業所では、事業所内にある4工場のうち、敦賀機能材工場のみで2004年5月からダイセル式を導入してきた。その結果、2009年までに数十億円のコスト削減を達成。しかし、「1工場のみの活動に留まっていたため限界を感じていた」(同社化成品生産技術総括部長の田中宏典氏)。そこで同社は、同事業所内のフイルム工場、ポリマー工場、関連子会社のフイルム工場の3工場と敦賀事業所の間接部門を巻き込み、ダイセル式を事業所全体に展開することを決めた(図)。

〔以下,日経ものづくり2010年5月号に掲載〕

図●活動範囲を3次元的に拡大する
一般的なカイゼン活動では、最初は製造現場からスタートし、次第に営業や販売、総務、技術の部門に横展開していく。しかし、ダイセル式ではこの2次元的な活動に加え、上司と部下の間でどのような指示や報告があるか(Z軸)まで3次元的にミエル化し、カイゼンを施していく。今回の東洋紡の取り組みでは、この対象範囲を「敦賀機能材工場」(左の図)から「敦賀事業所全体」(右の図)に拡大させた。