IDECは、三菱電機エンジニアリング(本社東京)や大阪大学などと共同で、家庭からゴミとして廃棄された樹脂のマテリアル・リサイクル(再生利用)に関する実証試験を実施した。現在、一般家庭で多く使われている樹脂においてマテリアル・リサイクルのシステムが成り立っているのは、ポリスチレン(PS)やポリエチレン・テレフタレート(PET)など一部。今回の実証試験は、より多くの種類の樹脂でマテリアル・リサイクルが成り立つかを検証するためのものだ。

 「社会を変えていくための第一歩」。大阪大学教授の東海明宏氏は、今回の実証試験の位置付けをこう説明する。従来は、樹脂の原料である石油資源が比較的安価に入手可能で、焼却施設などのゴミ処理インフラも十分にあるという前提の下で、樹脂を利用してきた。

 だが、今後は石油の希少性が高まる上、地方自治体の財政面などから処理インフラの維持・補修なども困難になる可能性がある。従って、今の使った捨てるという構造を転換していく必要があると、同氏は指摘する。

 そこで重要になるのが、省資源や省エネルギ、二酸化炭素(CO2)排出量の削減などで、サーマルリサイクルやケミカルリサイクルよりも有利になり得る、マテリアル・リサイクルである。だが、それを実現できているのは、前述の通り、一握りの樹脂しかない。

〔以下、日経ものづくり2010年5月号に掲載〕