2010年1月,半導体や液晶パネルの製造装置のメーカーであるアルバックが突如,電気自動車(EV)向け急速充電器の事業に参入すると発表した。太陽電池による発電設備と組み合わせて,EV急速充電システムを構築する。既に神奈川県茅ヶ崎市への納入が決まっており,初年度に10億円の受注を目指すという。また,同社の本業の方では,太陽電池製造装置を製造ノウハウまで含めて提供する「ターンキー」事業を推進している。製造装置メーカーがなぜ,EV急速充電システムやターンキーを手掛けるのか。同社の中村氏に聞いた。(聞き手は河合 基伸=日経エレクトロニクス)

(写真:加藤 康)

── EV向け急速充電器を発売するなど,製造装置メーカーの枠を超えた事業へと踏み出しています。どのような戦略に基づくものですか。

 我々は真空技術をコアに,50数年事業を続けてきました。その間,産業の趨勢に合わせるように,製造装置の主な用途を冶金からLSI,FPDへと変えてきました。

 ところが最近は,FPD向け製造装置の需要が飽和しており,製造装置の新たな用途を考える必要に迫られました。LSIやFPD向け製造装置に匹敵する巨大市場に育つ,新たな用途を探したわけです。しかしいろいろ検討した結果として,巨大市場になりそうな用途は今後現れないという結論に達しました。

 では,アルバックは今後,どのように成長を続ければいいのか。一つの道として,既存のFPD向け製造装置で,中国やインドなど成長著しい地域を開拓する方法があります。ただし,それだけでは大きな成長は望めません。そこで,製造装置の技術を生かして新たな事業を展開できないかと考えました。

 太陽電池と組み合わせたEV向け急速充電システムへの参入は,こうした考えからです。製造装置の電源技術を急速充電器に,製鉄所向けのモータ制御技術を太陽電池のパワー・コンディショナに活用しています。

『日経エレクトロニクス』2010年4月5日号より一部掲載

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