太陽電池を設備として持つマンションが増えている。エネルギーを生み出す「創エネ・マンション」の登場である。太陽電池との差異化を狙い,風力発電機や燃料電池,太陽熱温水器といった創エネ設備の設置をもくろむ動きもある。さらに,蓄電池やエネルギーの見える化システムの導入も始まった。目指すはエネルギーの最適利用。その効果はマンション内にとどまらず,周囲の施設を巻き込んで新たな発展を遂げる可能性がある。マンションを軸に,街全体のエネルギー利用の在り方が大きく変わり始めた。

ユーザーの関心は高い

 周辺に比べて家賃が1~2割高いにもかかわらず,築5年を経た今も空室待ちが絶えない人気の賃貸マンションが福岡県北九州市にある。2005年2月に竣工した,芝浦特機の「ニューガイア上石田」である。

 日本で初めて,屋上に設置した太陽電池の電力を各戸に個別配電するシステムを導入したことで,光熱費を抑えられると評判を呼んだ。実際に,5年間の平均光熱費は1戸当たり約3600円/月と低い。芝浦特機 代表取締役の新地哲己氏は「これまでのマンションは立地と価格で競ってきたが,今は光熱費がポイントだ」と意気軒高である。勢いを駆って,現在までに同社がかかわった太陽電池設置マンションは10棟に達する。

 この成功を目の当たりにしたマンション大手各社も動いた。2011年竣工予定のマンションに次々と太陽電池を設置する。マンション大手8社が共同で実施したアンケートでは,太陽電池などの環境関連設備の導入について,マンションの価格が多少高くなっても導入したいという意見が4割に達している。東京都は,マンションへの太陽電池の搭載を後押しする制度を2010年に始めた。太陽電池がマンションの標準設備になる日が近づいている。

太陽電池から始まる

 太陽電池のマンションへの設置は,創エネや蓄エネ,家庭用エネルギー監視システム(見える化システム)といったエネルギー関連設備の導入を本格化させるキッカケになりそうだ。既に風力発電機や太陽熱温水器,燃料電池などの創エネ設備の導入は視野に入っている。Liイオン2次電池による蓄エネ設備や見える化システムの導入を決めたマンションも現れた。

『日経エレクトロニクス』2010年4月5日号より一部掲載

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