現状では、電気自動車やハイブリッド車の駆動用モータに、コストの高い希土類を使うことが欠かせない。東京理科大学は、SRモータに着目、ハイブリッド車向けの駆動用モータを開発した。トヨタ自動車の先代「プリウス」のモータと同等の大きさと出力、トルク、効率を実現した。解析ソフトの活用で、コア材料とモータ構造を工夫した。

 東京理科大学は、ハイブリッド車向けの駆動用モータを試作した(図)。磁石を全く使わないSR(スイッチトリラクタンス)モータの構造としたのが特長である。ネオジム系磁石などコストの高い希土類を使わなくても駆動用モータを実現できることを示す。
 希土類は、産出国や産出量が限られるほか、投機の対象になりやすいため、市場価格が時期によって2~3倍変動することがある。今回試作した駆動用モータを実用化できれば、自動車メーカーはこれまで以上にハイブリッド車の価格を抑えられるだけでなく、将来に向けて安定した量産計画を立てることができるだろう。
 現在、トヨタ自動車「プリウス」やホンダ「インサイト」など代表的なハイブリッド車の駆動用モータは、ネオジム系磁石をロータに埋め込んだIPM(埋め込み式永久磁石同期)モータだ。IPMモータは、磁石トルクと磁気抵抗(リラクタンス)トルクの両方を利用できることから、効率や性能は高い。しかし、生産面ではネオジム系磁石に依存しているため、新たな解決策が求められていた。

以下,『日経Automotive Technology』2010年5月号に掲載
図 試作した駆動用モータ
(a)本体外観。駆動用モータで一般的なIPM(埋め込み式永久磁石同期)モータの代わりにSR(スイッチトリラクタンス)モータの構造を採用した。先代「プリウス」のIPMモータと同等の仕様を実現する。(b)モータ内部のコアの構造。ステータは18極、ロータは12極。極数を多くすることでトルクを高めた。ステータには巻線が付く。