経営コンサルタントの視点
デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー博士(経済学) 周 磊氏
グローバルにおける再生エネルギおよび新エネルギ車関連技術の動向分析・戦略立案が専門。日系企業の海外進出戦略にも詳しい。

 中国自動車市場が急成長を遂げている。原動力の一つは、新エネルギ車〔ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)など〕で世界自動車産業のリーダーを目指す中国中央政府だ。中央政府は、新エネルギ車に関する研究開発(R&D)支援政策「国家863計画」、普及促進政策「十城千両」などの政策を、次々と打ち出している。
 積極的な政策に呼応して、自動車業界のプレーヤーの活動も活発だ。外資系完成車メーカーは、高品質・高性能の新エネルギ車をそろえ、中国市場への車両投入を虎視眈々と狙っている。中でも日系完成車メーカーではトヨタがHEV、日産がEVを武器に市場を席巻しようとしている。
 しかし、中国市場での本格展開に向けて、彼らの課題は少なくない。中国市場に適応するためのコスト低減や、部品・素材の安定調達などに腰を据えて取り組まなければ、市場シェアの維持・向上は容易でない。
 一方、国内資本系の完成車メーカーも技術の蓄積を図りつつ、市場に投入する時期をうかがっている。また、電動三輪車・農機メーカーから出発した超低価格・小型のEVメーカーも数多く出現。今後、彼らは技術蓄積による品質向上にまい進し、彼らの一部は超低価格帯から中間価格帯への移行が見込まれる。

以下,『日経Automotive Technology』2010年5月号に掲載