欧州ジャーナリストの視点
フリーランス・ジャーナリスト Ian Adcock氏
英国在住。『What Car』『Autocar』『Motor』などの自動車専門誌の編集者を経て、1980年からフリーに。自動車技術専門誌の『European Automotive Design』誌に寄稿するなど技術にも詳しい。

 世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車が、世界全体で対象台数約850万台という世界最大のリコールに踏み切ってから、同社はほとんど立ち直っていない。このリコール対象台数は、欧州だけで約180万台、ここ英国だけでも18万1000台近くに上り、英国で走っているトヨタ車のおよそ8台に1台が対象ということになる。
 英国において、そして欧州において、同社はリコールの原因について機械的なものであると主張している。この不具合は、機構内部の摩擦によって、アクセルペダルは踏み込まれた位置から戻らなくなったり、あるいは戻るのがゆっくりになるという現象が引き起こされるというものだ。それは、ドライバーが減速したいときに、車が加速してしまうということを意味する。
 この不具合は、機構が磨耗し、寒い時期に結露するなど、「環境」によって状況が悪化したときにだけ生じると、同社は主張している。

以下,『日経Automotive Technology』2010年5月号に掲載