ETC車載器は、累計出荷台数が3000万台を超えた。最近ではETC車載器の次世代版に相当する「ITS車載器」を実用化する動きが活発になっている。高速道路の料金所における決済機能に加え、快適性や安全性を高める機能を利用できる。

 従来のETC 車載器が続々と、その進化版であるITS車載器(DSRC対応)に置き換わりつつある。2009年に三菱電機とパイオニアが市販を開始したほか、トヨタ自動車も2009 年10 月に部分改良した「レクサスLS」シリーズでITS車載器を搭載した。現状ではETC車載器とITS車載器の両方が併売されているが、今後はITS車載器が一般的になるだろう(図)。
 これまでのETC 車載器は、主に高速道路での料金決済に機能を絞ったものだった。これに対してITS車載器は、ETC の機能に加えて、クルマの安全性や快適性を向上させる機能を備えるのが特徴である。ITS車載器は、ETC車載器と同様に、車載器と道路上の設備との間でデータ通信をする。ただしITS車載器は、ETCが作動する高速道路の料金所だけでなく、走行中でも道路上の通信設備と通信することでユーザーに新たな付加価値を提供する。
 ITS車載器は、携帯電話や公衆無線LAN サービスと違い、ユーザーが月額通信料金を負担する必要はない。車載器さえ用意すれば、通信料無料で利用できる。
 ITS車載器は、ETC車載器にはなかった安全性を高める機能や、快適性を高める機能を備える。安全性を高める機能の一つが、高速道路の合流地点において他車の接近を警告する機能である。

以下,『日経Automotive Technology』2010年5月号に掲載
図 ITS車載器(三菱電機製)
ETC車載器と同等の大きさであり、ETCカードを挿入するスロットが付く。パナソニックも実用化している。