ジェイテクト中部テクニカルセンター センター長 渡邉正幸氏
世界で初めて実用化した軽自動車用の電動パワーステアリングから、現在まで開発に携わってきた。

 クルマの燃費改善は、今や新車開発の最重要項目の一つである。対応策の一つであるパワーステアリングの電動化は、一般的に約3 %の燃費改善効果があるとされる。
 ジェイテクトは、その電動パワーステアリングを、1988年に世界で初めて開発・量産したメーカーである。ただ正確を期すれば、ジェイテクトは、2006年に光洋精工と豊田工機の合併によって誕生したメーカーであり、1988年当時、電動パワーステアリングを世界で初めて世に送り出したのは、光洋精工であった。その電動パワーステアリングで、光洋精工における開発の初期からかかわり、現在ジェイテクト中部テクニカルセンターでセンター長を務めるのが渡邉正幸だ。
 「なにしろ子供のころからクルマが好きでした。私は京都出身なのですが、家の前を通る国道9号線を走るクルマをずっと眺めて飽きなかった記憶があります。大学は技術系を卒業したわけですが、当時は就職難で、就職できたのは奈良にあった光洋自動機というステアリングメーカーでした。従業員が500人ほどの中堅企業です」
 1980年に同社に入社した渡邉は、実習期間1カ月ほどで設計部署に配属となった。同期では1年間実習した者もいたようだが、渡邉を含めた何人かは、さっそく実戦に投入されたのだった。

以下,『日経Automotive Technology』2010年5月号に掲載