ホンダは2010年2月末、「インサイト」のハイブリッドシステムを流用した3ドアの新型スポーツ車「CR-Z」を発売した。低燃費で環境に優しく、運転の楽しいクルマが狙いで、無段変速機(CVT)搭載車以外に6速手動変速機(MT)仕様を用意した。

 同社は1990年に「NSX」、1999年に「S2000」と、ほぼ10年おきに新型スポーツ車を発売してきた。本来はNSXの後継を大排気量のFR(前部エンジン・後輪駆動)車が担うはずだったが、経済不況の影響で開発を中止。今回のCR-Zが同社にとって久々のスポーツ車となった(図)。
 ただ、CR-Zはスポーツ性だけを追求したクルマとは一線を画している。運転の楽しさに加えて、燃費も優れるクルマとして新しい価値を提案しているのだ。同車は3月14日時点で8000台の受注を獲得したといい、販売は好調な滑り出しを見せている。
 パワートレーンとボディ骨格は2009年に発売したインサイトを最大限流用している。そもそもCR-Zの年間の販売計画台数は5万台と少なく、生産は国内だけ。見えない部分は徹底的に流用し、走行性能や外観にかかわる部分だけを独自設計した。ハイブリッドシステムも基本は同じで、モータは最高出力10kW、荷室下に積む2次電池は電圧100V、電流容量5.75Ahとスペックも変わらない。

以下,『日経Automotive Technology』2010年5月号に掲載
図 ホンダの「CR-Z」
車両寸法は全長4080×全幅1740×全高1395mm、ホイールベースは2435mm。トレッドはインサイトより25mm拡大した。価格は226万8000円から。