特集

充電インフラを握れ

クルマと家を電力で制する
解説2

トヨタに何が起こったのか

電子制御の不具合を探る
NEレポート
インタビュー

どんどん先に進もう,それが日本の強みだから

小宮山 宏 氏
三菱総合研究所 理事長 東京大学 総長顧問
ワールド・レポート from チェコ

ソフト開発に明日を懸ける,教育や英語力に強み

ドキュメンタリー

夜行便で飛んでこい

ソニー「TransferJet」の開発(第1回)
NEアカデミー
Liイオン電池 古今東西(最終回)

空気電池を実用化できるか,EVの課題は電池容量よりも充電

クローズアップ
  • クルマ:PNDの新たな土俵は自転車,自動車専用からの脱皮を図る
  • 部品/部材:伸び悩む磁気テープの面記録密度,新材料で“2年で2倍”以上を目指す
  • 組み込みソフト:Intel社とNokia社の「MeeGo」,アプリ開発者の呼び寄せ狙う
キーワード

CdTe型太陽電池

編集長から

 先日,トヨタ自動車や日産自動車,三菱自動車,富士重工業,東京電力の5社が,電気自動車(EV)の普及に向け,急速充電器の標準化団体「CHAdeMO(チャデモ)協議会」を設立したと発表しました。チャデモとは,なかなか楽しげなネーミングですが,その名前とは裏腹に協議会は大きな野望を抱いています。同協議会の狙いは「電気自動車のさらなる普及に必要不可欠な急速充電器の設置個所の拡大,および充電方式の標準化を図ること」です。ここでいう標準化は,何も国内だけではありません。むしろ世界市場に目を向けていますと思います。

 それはなぜか。今,世界中で話題となっているスマートグリッド(次世代電力網)では,EVが大きな役割を果たします。EVを電力網につなぎ,EVの蓄電池を充放電させることで電力網と電力をやりとりさせ,電力の需給バランスを最適化するのに役立てるのです。ここでカギを握るのは,EVなどの充電インフラです。充電インフラを構築する際に,自社(自国)の技術を活用できれば,これから繰り広げられる国際的なスマートグリッド関連技術の開発/展開競争を優位に進めることができるでしょう。

 このため,欧米や中国などが充電インフラにまつわる標準化技術をいろいろ提案している段階です。もちろん,EV開発で先行している日本も負けてはいません。チャデモ協議会は,日本の積極的な姿勢を示す一つにすぎません。すでに米国市場や中国市場で,実を結び始めている例もあります。充電インフラが今後果たす役割とその重要性,キーとなる技術,そして主導権を握るのは日本か,米国か,あるいは中国か――。こういった視点で最新号の特集「充電インフラを握れ―クルマと家を電力で制する―」をまとめました。

 このほか最新号では,ソニーの電子書籍端末などを分解,分析した解説「読書体験で差異化図る,最新・電子書籍端末を分解」,一連のトヨタ・リコール問題を技術的な切り口でまとめた解説「トヨタに何が起こったのか―電子制御の不具合を探る―」,先月開催された半導体の国際会議「ISSCC」で話題を呼んだ技術を紹介する解説「オンチップで高精度実現,斬新な発想のCMOS発振器と温度センサ」なども掲載しております。ぜひ,ご一読いただければ幸いです。

日経エレクトロニクス編集長  田野倉 保雄