年が明けて間もない2010年1月7日,米国ラスベガスに集った多数の報道陣を前にしたHuang氏は「2010年はタブレット革命の始まりの年」と高らかに宣言した。グラフィックス描画処理LSI(GPU)の雄として知られるNVIDIA社は今,携帯機器向けSoC事業に並々ならぬ意欲を見せている。創業以来NVIDIA社を率いてきたHuang氏に,同社が目指す姿を聞いた。(聞き手は竹居 智久,内田 泰=日経エレクトロニクス)

(写真:加藤 康)

──タブレット・コンピュータ(以下,タブレット)は,決して目新しいものとはいえません。例えば米Microsoft Corp.も長きにわたって取り組んできました。なぜ今,タブレットに注目するのでしょうか。

 私が考えるタブレットは,これまでのコンピュータとは異なる種類のものだ。高精細な画面,その画面をタッチすることによる操作,そして携帯性を兼ね備えた新しいコンピュータだ。

 Microsoft社が開発を主導したタブレットは,業務用途などで一定の成功を収めた。ただ,その市場は小さかった。これからはアプリケーションが大きく変わる。タブレットは,書籍や雑誌,動画,そして世界中に散らばるWebサイトなどのコンテンツを消費するためのコンピュータになる。

 人々は時間の大半を何らかのコンテンツの消費に使っている。タブレットでは,パソコンやスマートフォン,既存の紙などの媒体ではできなかった新しいコンテンツの消費形態を実現できる。例えば雑誌コンテンツに,動きのあるリッチな広告を入れたり,関連情報にジャンプできるようにしたりすれば,「雑誌を読む」という体験をガラッと変えられる。より洗練されたデザイン,より美しい映像の出力,より長い駆動時間を持つタブレットが続々と登場するだろう。

 米Apple Inc.の「iPad」が出てきたことも,こうした流れを象徴している。タブレットを実現するための技術がそろい,そうした技術の進化を見ていた人たちが一斉に同じコンセプトを打ち出したのだと思う。

 過去10年は「パソコン」の時代だった。そのパソコンは,Windowsパソコンとほぼ同義だ。今それが変わろうとしている。Windowsパソコンではないコンピュータによる,真の意味での「パーソナル・コンピューティング」の時代がやって来る。

『日経エレクトロニクス』2010年3月8日号より一部掲載

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