消費者に「あの店で,1人で2000円以上を使うのは至難の業」と言わしめるレストラン・チェーンがある。パスタやピザなどを主力商品とするイタリア料理のファミリーレストラン「サイゼリヤ」だ(図)。

 それもそのはず。同店では,例えばトマトソースとモッツァレラチーズが載った「マルゲリータピザ」が399円。ポテトと野菜,目玉焼きが添えられた「ハンバーグステーキ」が399円。これらにサラダやドリンクバーを加えても,レシートに印字された金額は1000円以上にはならない。しかも,他店に比べて特別に量が少ないわけでも,質が悪いわけでもない。この「コスト・パフォーマンスの高さ」が消費者に受け,昼食時には行列ができる店もあるほどの人気を博している。

 同チェーンを日本各地に展開しているのが,店名と同じ名前のサイゼリヤ(本社埼玉県吉川市)だ。2010年1月末現在の店舗数は813。2009年度(2008年9月~2009年8月期)には883億2300万円を売り上げた。2010年度の売上高は前年度比8%増の950億円になると予想されている。2010年度の利益は65億円になる見通しだ。

 この不況時に急成長を遂げられるのは,何も価格設定が低いからだけではない。同様の価格設定のレストランチェーンはほかにもあるが,そのほとんどが赤字に陥っている。

 ではなぜ,サイゼリヤは勝者となり得ているのか。その最たる理由が,前述のコスト・パフォーマンスの高さにある。「安かろう悪かろう」ではなく,「安くてうまい」と消費者に思わせることに成功しているのだ。そんな同社の基本方針の1つは「原材料費は絶対にケチらない」(同社社長の堀埜一成氏)こと。事実,原価率は35.5%(2009年度決算)で,競合他社に比べて4ポイント以上も高い。

〔以下,日経ものづくり2010年3月号に掲載〕

図●サイゼリヤの強さの秘密は「コストパフォーマンス」
見た目はごく一般的なファミリーレストランだが,ハンバーグステーキは399円,グラスワインは100円など他のレストランに比べて価格が圧倒的に安い。とはいえ,明らかに量が少なかったり味の満足度を犠牲にしたりしているわけではない。そのコスト・パフォーマンスの高さに,週末や平日の昼食時になると行列ができる店舗も数多い。写真の店は,群馬県高崎市にある前橋インター店。