産業機械や鉄道,風力・太陽光発電などの分野で,エネルギ回生や微小電力の回収ができる蓄電デバイスとして大容量キャパシタが注目されている。これまで捨てていた電力を有効活用できるからだ。キャパシタは,電子機器のバックアップ用電源としてコイン大の小型のものから普及し始めたが,環境意識の高まりを追い風に,今まで以上の環境対策,省エネ対策を進めるための蓄電デバイスとして採用する機器が広がっている。

 2009年にIHI運搬機械(IUK,本社東京)は,キャパシタを使ったエレベータ式駐車塔を開発した(図)。回生電力を蓄電して利用するもので,電力消費を2~3割減らせるという。「キャパシタを使ったエレベータ式駐車場は世界初だろう」(同社)。

 エレベータ式駐車塔は人用のエレベータと同様に,搭乗かご(ケージ)を昇降モータで上下させてクルマを駐車階まで運ぶ。ケージ(もしくはカウンタウエート)を上昇させる際は電力を消費する(力行時)が,下降時はモータが抵抗となって起電力が生じる(回生時)。この回生電力をキャパシタに蓄電して,力行時に補助電源として使うのである。蓄電デバイスとしては鉛蓄電池などの2次電池も検討したが,瞬発的に充放電できる点や,寿命が長い点などを評価してキャパシタを採用したという。従来は,下降時の電力は回生抵抗で熱として放出していた。

 同社の試算によると,32台収容の平均的なエレベータ式駐車塔の場合,必要なキャパシタの容量は192Wh。寿命を考慮して2割ほどの余裕を持たせると400Vで164Wh(実質使用可能容量は115Wh)のキャパシタユニットを2つ使うのが最適とみている。ただし,駐車塔の立地や使い方によって必要な容量は変わってくるため,案件ごとにキャパシタユニットの組み合わせを最適化する必要があるとしている。

〔以下,日経ものづくり2010年3月号に掲載〕

図●IHI運搬機械のエレベータ式駐車場とキャパシタ
キャパシタによる電力回生機構を備えたエレベータ駐車場の試験塔(a)と,キャパシタユニット(b)。