生産現場のカイゼン・リーダー育成を手掛けるPEC産業教育センター(本社岐阜県羽島市)はこのほど,部材の調達から製品の販売までの全生産工程の中から「ムダの在りか」を見える化する理論的手法を,東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏と共に開発した。製造途中の製品の「価値」と「コスト」が,時間の経過とともにどう推移するかを表す「投入効果図(Input Output Diagram)」を使い,物が停滞する工程を見つけ出す。2009年12月までに複数の工場で実績を得た。

 PECではこれまで,「生産現場におけるカイゼン活動の成果をいち早く業績に反映させるには,まず仕掛かり品の『停滞』と『運搬』をなくし,生産リードタイムを短縮することだ」と提唱してきた。これはPEC所長の山田日登志氏が確立してきた考え方で,投入効果図は,この提唱を科学的に裏付けることを目的に考案された。

 投入効果図は,縦軸を価値(コスト),横軸を時間にしたグラフ(図)。ここで表現する情報は,製品が各工程に滞在する「時間」,各工程で付加された「価値」,各工程で消費された「コスト」の3つである。工場内の工程だけではなく,部品調達や販売など全工程を含めることがポイントだ。

〔以下,日経ものづくり2010年3月号に掲載〕

図●投資効果図の活用と効果
従来は,現場で工程を見てどこにムダが潜んでいるかを診断していた。目を付けるべきは「物の停滞」と「運搬作業」だ。この方法でも訓練を積めば診断が可能だが,これを生産リードタイムで展開した「投入効果図(Input Output Diagram)」にすると,「なぜ物の停滞と運搬がムダか」「どこにそれらのムダがあるのか」を理解しやすくなる。
[画像のクリックで拡大表示]