産業技術総合研究所は,京都大学,日立金属と共同で,AZ31合金などの汎用マグネシウム(Mg)合金板材の常温成形性をアルミニウム(Al)合金並みに高める技術を開発した。冷間プレスができるため,低いコストでMg合金製部品を造れる。2010年1月下旬,日立金属の安来工場(島根県)で幅300mm,厚さ0.3~0.6mmのAZ31広幅圧延材のサンプルを供給し始めた(図)。

 Mg合金は実用金属の中で最も軽く,比強度が高い。資源も豊富にあることから次世代の軽量構造材料として注目を集めており,鋳造品を中心にノートパソコン,携帯電話機,自動車部品への利用が拡大している。鋳造ではなくプレスにできれば,軽量の大型部品を造れると期待される。

 ところが,Mg合金は常温での成形性が低く,プレスするためにはワークと金型を250℃以上に加熱して温間プレスする必要がある。これがMg合金のプレス加工費を大幅に押し上げる要因となっていた。加熱装置のない汎用のプレス機を使ってMg合金の圧延材を冷間プレスできれば加工コストを大幅に削減できることから,新しい技術の開発が求められていた。

〔以下,日経ものづくり2010年3月号に掲載〕

図●新技術により作製した汎用Mg合金(AZ31合金)圧延材
板幅300mm,板厚0.6mm。