現在,国際宇宙ステーション(ISS)には日本から野口聡一宇宙飛行士が滞在し,2010年5月に帰還するまでの間,日本の実験棟「きぼう」を使って無重力実験などを行っています。最近では,高品質たんぱく質結晶生成実験が始まりました。これは,環境負荷の小さいバイオ燃料をはじめ,感染症やインフルエンザなどの治療に使える治療薬の開発につながる実験として期待されているんです。そんなきぼうと,我々運用チームは筑波宇宙センターから米国の中継衛星を介して通信し,システム運用や実験運用に当たっています。
振り返れば,このプロジェクトは1984年に米国のレーガン大統領(当時)が提唱し,翌1985年に日本が参加を決めました。今からさかのぼること実に25年前,四半世紀前のことです。当時は,初めての本格的な有人宇宙施設の開発に取り組むということで,現在の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の母体の一つである宇宙開発事業団(NASDA)を中心に,さまざまなメーカー,さまざまな専門性を持った人間が集まりました。私も,1991年から研究開発部門の人間として,この世紀のプロジェクトに協力することになったんです。
〔以下,日経ものづくり2010年3月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)
宇宙航空研究開発機構 JEM運用プロジェクトマネージャ