デジタル・カメラの世界で今,大きな変化が起きようとしている。高級機種の代名詞だった「一眼レフ機」が「ミラーレス機」という新たな勢力によって置き換えられようとしているのだ。この飛躍のカギを握るのが,電子式のファインダー「EVF」である。

業界秩序を変える
EVF(electric view finder)は,レンズ交換機の勢力図やサプライ・チェーンを変え得る。

 デジタル・カメラの高級機種といえば,すなわち一眼レフ機。そんな時代が今,終わろうとしている。一眼レフ機に代わる,新たなカメラが市場を席巻しようとしているのだ。「10年も経てば一眼レフ機は,情感を重視した低機能の商品として,細々と命脈を保つだけになるだろう」。カメラの商品企画者の中には,こうした見方すら出ている。

 一眼レフ機に取って代わり,高級機種の主流に躍り出ようとしているのが,「ミラーレス機」である。ミラーレス機は,一眼レフ機で用いる光学式ファインダー(OVF:optical view finder)の代わりに,電子式ファインダー(EVF:electric view finder)を使う。OVFには,被写体の像を入力するため,鏡を用いたミラー・ボックスが必須であり,これがOVFとともにカメラ本体内を占領する大型部品だった。そのため小型化に課題がある。それがミラーレス機で用いるEVFの体積と重さは,OVFとミラー・ボックスの半分未満で済む。

 OVFとミラー・ボックスには,価格が高いという課題もあった。これに対しEVFの中核部品であるマイクロディスプレイは将来,劇的に低コスト化する可能性が指摘されている。さらにEVFを使えば,OVFでは不可能なさまざまな新機能を盛り込める。

パンドラの箱

 ミラーレス機時代の到来は,一眼レフ機メーカーにとっては,大きな脅威となる。ミラーレス機は業界において,長らく「パンドラの箱」とされていた。ミラーレス機の登場によってOVFとミラー・ボックスが存在価値を失うと,その技術に強みを持っていた一眼レフ機メーカーが,優位性を発揮できなくなる恐れがあるからだ。

『日経エレクトロニクス』2010年2月22日号より一部掲載

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