雑誌 特集

増殖寸前 太陽電池

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2010/02/05 09:00
 

太陽電池の爆発的普及期が
ついにやってくる

第1部<総論>
製造コストが大幅に低下
グリッド・パリティが目前に

太陽電池が「温室」を飛び出し,あたかも「雑草」のように増殖する日が近づいている。
電力の買い取り制度の普及や補助金の大量投入によって,住宅やマンションだけでなく,ビルや工場にまで,あらゆるところで太陽電池が増える条件が整ってきた。

想定外の事態で2009年に部材コストが大幅に低下
太陽電池モジュールの製造コストやシステム価格が,2009年になって急落した背景を示した。リーマン ショックによる不況やスペインでの太陽電池推進政策の変更(いわゆるスペイン ショック)が同時期に重なったことが,コスト低減の大きな要因になった。

 「当社は,太陽光発電での一刻も早いグリッド・パリティ実現を目指して邁進している」(シャープ 代表取締役副社長の濱野稔重氏)──。

 太陽光発電など新エネルギー関連の事業に携わる企業や担当者にとって,「グリッド・パリティ」という言葉ほど,待ち焦がれるものはない。

 グリッド・パリティとは,新規のエネルギー源(太陽光や風力など)の発電コストが既存の商用電力(グリッド)の料金に等しくなる(パリティ)ことを指す。

 例えば,太陽光発電でグリッド・パリティが実現されると,補助金が無くても自発的に太陽電池を設置する個人や法人が増え,それがさらに太陽電池の価格や導入費用を下げる,といった好循環が回り始める。こうなると,太陽電池の普及が一気に加速することになる。いわば,太陽電池がそれまでの「温室」から飛び出し,太陽光が照射されるあらゆる地表に「雑草」のように生え拡がる瞬間である。

「10年前倒し」で早まる

 太陽光発電のグリッド・パリティ実現は,果たしていつになるのか。実は今,この予想時期が大幅に前倒しされつつあるのだ。

 2007年ごろは「日本でグリッド・パリティが実現するのは2020年前後」(米McKinsey & Company社)という見方が多かった。それが,ごく最近では「2010~2012年」(富士経済)に変わってきた。わずか3年ほどで,予想時期が10年近く前倒しされた格好である。まさに今,この瞬間に実現されている可能性もある。

『日経エレクトロニクス』2010年2月8日号より一部掲載

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第2部<パネル技術>
薄膜型が三つどもえの争い
CIGS系が台風の目に

グリッド・パリティの実現は,太陽電池技術の本格的な競争の始まりでもある。
変換効率の向上などを速やかに実現できなければ,あっという間に取り残される。
今後伸びる潜在力が高いのはCIGS系。新規参入企業が,続々と出現している。

同じ薄膜太陽電池でも将来性は大きく違う

 「我々はこれから『HITでFIT』をキャッチフレーズに,積極攻勢をかける」(三洋ソーラーエナジーシステム 代表取締役社長の亀田正弘氏)──。

 日本を含む世界各地で電力の買い取り制度(FIT:feed-in tariffs)が始まったことで,太陽電池の市場シェアの長期低落傾向から息を吹き返しそうなのが三洋電機だ。単結晶Si型を基に独自の技術で改良した同社の太陽電池「HIT」は,現時点で量産品としては世界最高レベルの20.0%という変換効率を誇る。それが今,ドイツや日本で人気を集め,「2009年半ばから工場はフル生産状態」(三洋電機 ソーラー事業部 事業企画部 担当部長の脇坂健一郎氏)と,スペイン・ショックなどどこ吹く風といった好調ぶりだ。

単結晶SiとCdTeが勝ち組に

 今,太陽電池の市場と技術トレンドが激変している。HITのような高い変換効率を備えた単結晶Si型太陽電池と,米First Solar, Inc.のCdTe系太陽電池のような「化合物薄膜太陽電池」が大きくシェアを伸ばし,一方で従来主流だった薄膜Si型太陽電池が苦しい戦いを強いられているのである。この変化は今後さらに続き,特にCIGS系太陽電池が市場の勢力図を大きく変えていくとみられる。

『日経エレクトロニクス』2010年2月8日号より一部掲載

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第3部<システム技術>
眠りから覚める「要」の装置
用途に応じて多様化が加速

この数年間,ほとんど性能が向上していなかったパワー・コンディショナ。
グリッド・パリティ実現を間近にして,新規参入メーカーが増えている。
用途の多様化や規模の拡大に合わせて,製品の進化が急速に進み始めた。

グリッド・パリティとパワー・コンディショナをめぐる三つの課題

 太陽光発電システムの中で太陽電池と同様に重要であるにもかかわらず,この数年ほとんど進化が止まっていた機器がある。パワー・コンディショナだ。太陽電池から出力を最大限に引き出し,直流を交流に変える機器である。複数の太陽電池モジュールを束ねる「要」の位置にあることから,太陽光発電がさまざまな場所に導入されればされるほど,重要性を増す。

 ところが,既存の製品の多くは,太陽電池の利用形態の多様化に追い付いていない。このままでは,太陽光発電の発展の阻害要因となる可能性さえ出ている。

閉塞状況に異業種から新風

 進化が遅れた背景には,パワー・コンディショナが太陽電池などとセットで販売・導入されてきた点がある。例えば日本の場合,2000年前半まで,太陽光発電システムの市場は戸建て住宅が中心であり,メーカー数社による市場の寡占化が進んだ。しかも,あるメーカーの太陽電池を選ぶとパワー・コンディショナも同じメーカーの製品になり,選択の余地がなかった。競争原理が働かなかったのだ。

 最近になって,その状況がようやく変わりつつある。太陽光発電システムの世界的な競争が激しくなるにつれてパワー・コンディショナ市場に異業種からの参入が相次ぎ,新風が吹き込んできたためだ。需要が増えつつあるマンション,学校や事業者向け新市場が彼らの狙いである。戸建て住宅向けでも,中国や韓国メーカーの格安の太陽電池モジュールと,別メーカーのパワー・コンディショナ製品を組み合わせて販売する工務店も現れてきた。そうした変化によって,パワー コンディショナのいくつかの技術的課題に解決のメドが付くなど,新たな技術トレンドが生まれつつある。

『日経エレクトロニクス』2010年2月8日号より一部掲載

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