日本の工場が人材活用の方向性を決断すべき時が来た。現在開会中の通常国会で鳩山政権は,製造業派遣を原則禁止する内容を盛り込んだ労働者派遣法改正案を提出する。成立した場合,その打開策の一つとして注目されているのが「請負」だ。しかし,2006年に大手電機メーカーなどによる偽装請負が次々と摘発されてから,請負化に二の足を踏むメーカーは多い。失敗しない請負化の手順と考え方とは? リコー子会社の成功事例に学ぶ。

 日本の工場から派遣社員が消える日が,刻一刻と近づいている。現在開会中の第174通常国会で与党の提出する労働者派遣法改正案が成立すれば,公布日から3年以内に,物の製造に対する労働者派遣(製造業派遣)が原則として禁じられる。「工場を海外へ移せと言うのか」。そう憤るメーカーの経営者も少なくない。

 工場の海外移転に経営者たちが傾くのには,理由がある。派遣制度を活用できなくなれば,生産コストの増加を免れないからだ。その是非の議論はここでは置くとしても,派遣社員の流動性が生産変動の対応に一役買ってきたのは事実。これまで良しとされてきた制度の変更に対して,すぐには対応できないのが実情だ。製造業派遣禁止が日本メーカーの経営に与える打撃は大きい。

 海外移転以外の対策として考えられるのは,事実上,二つしかない。(1)(正社員以外の)パートやアルバイトといった社員を直接雇用する(2)生産ラインの一部を切り離し,そこの仕事を請負会社に委託する──だ。

 ところが与党が想定しているのは,その二つのどちらでもない「メーカーが派遣社員を正社員として雇用すること」である。しかし,人件費の安い海外工場が攻勢を強める中,メーカーの経営者がこの選択肢を選ぶ可能性は極めて低いと言わざるを得ない。従って,実現性の高さから見ると,国内での対策は前述の二つに絞られるわけだ。

〔以下,日経ものづくり2010年2月号に掲載〕