携帯電話を使う「ドライブレコーダ」が実用化された。車外では通常の携帯電話として使えるが、車内では事故の状況を映像で記録するドライブレコーダとして機能する。専用機である従来品よりも使い勝手が良く、低コスト化できる。

 IT ベンチャーのパイ・アールは2009年末、携帯電話をドライブレコーダとして使うソフトウエア「レコダ」を開発した(図)。携帯電話をドライブレコーダとして使うシステムは業界で初めて。
 車両前方の映像を携帯電話のカメラで記録し、事故発生時には事故前後の映像を自動的に管理者にメールする。従来のドライブレコーダ専用機と比べて、価格を抑えられるほか、映像の管理を容易にできるのが特徴である。
 発売当初は、運送業者が主なユーザー層であり、既に数社が導入を計画中だ。今後、個人向けでもニーズがあれば提供を検討する。価格は、個別見積もりで、事業者のユーザー数で異なる。
 これまでのドライブレコーダは、高機能で高価格であった。通信機能を備えていないにもかかわらず、価格は1台10万円程度。運送事業者が数十台導入しようとすると、数百万円以上になってしまう。
 しかも、ドライブレコーダのもう一つの機能である、個々のドライバーの運転状態を管理する場合は、使い勝手が悪かった。まず、運転時の映像を記録したメモリーカードを、事務所に戻った後に管理者に手渡しするといった作業が必要になっていた。この結果、運転管理用途ではあまり使われていなかった。
 ドライブレコーダに対するニーズを調べたのが、全日本日本トラック協会である。2009年11 月に発表した調査レポートによると、多くのユーザーが「価格の安さ」「使いやすさ」を求めている。当社は、これらの要望を満たすためにレコダを開発した。
 レコダは、加速度センサとカメラを内蔵するWindowsベースのスマートフォンがあれば、そのほかのハードウエアは必要ない。ソフトウエア(レコダ)の価格は、従来のドライブレコーダよりは低く設定しているため、導入する企業はコストを抑えることができる。このほか、撮影した映像を管理者のパソコンにメールで送信することができ、映像を管理する手間が大幅に向上するというメリットもある。

以下,『日経Automotive Technology』2010年3月号に掲載
図 携帯電話をドライブレコーダとして使う
(a)専用のホルダーで、携帯電話をインパネ上に固定する。カメラで撮影した映像を携帯内部のメモリーに記録しており、一定以上の衝撃(揺れ)を検知すると映像データを管理者に送る。(b)携帯電話上での設定画面。管理者に映像を送信する衝撃のレベルを設定する。レベル5は少しの揺れでも映像を送信する。