クルマの内装材で、発泡樹脂の採用を広げたり、開発を強化する動きが出ている。部品を軽量化できるだけでなく、断熱材や表皮として使うことで低コスト化が期待できるためだ。空調ダクトでは3割軽量化しつつ、3割低コスト化した事例が登場。ドアトリムでは、発泡倍率を30%高めつつ、見栄えを確保して表皮を張り付けなくても使えるようにする開発が進んでいる。軽さプラスαの機能を提供する、新しい発泡樹脂の展開に迫った。

 クルマの内装部品で、発泡樹脂の採用が拡大している。その代表例が、空調ダクトやドアトリム、ドアモジュールの基板である。使用する樹脂材料を減らすことで軽量化できるのが最大のメリットだ。
 しかしその一方で、発泡させるためには、発泡剤(化学発泡剤や揮発性発泡剤、超臨界流体)を使うことによるコストアップの要因がある。単純にどの部品も、発泡樹脂に置き換えればいいというものではない。
 ここに来て、発泡樹脂の採用が進んでいるのは、軽量化以外に断熱性の高さや見栄えの良さといった「プラスα」のメリットと組み合わせることで、部品を低コスト化することが可能になってきたためだ。自動車業界は、発泡樹脂の採用によって、断熱材が不要になったり、表皮や塗装が不要になる、といった新しい効果に目を向け始めた。

発泡樹脂の断熱効果を生かす

 発泡樹脂の採用が進んでいる部位の一つが、後席の空調ダクトである。エアコンの暖気や冷気を後席まで伝える役割を果たす。日産自動車が2009年11月に発売した「フーガ」、トヨタ自動車が2008年5月に発売した「アルファード」「ヴェルファイア」が発泡樹脂製のダクトを採用した(図1、2)。
 これまで発泡樹脂で高い発泡倍率を維持しつつ、形状の複雑な部位へ適用することは難しかった。今回紹介する空調ダクトは、2倍程度と高い倍率で発泡させている。従来は高発泡にすると、樹脂の中の気泡の数が多くなり、成形時の流動性が悪くなり、金型内でRの付いた部位があると気泡がつぶれたり、気泡が破れて部品に穴が開いてしまうという課題があった。

以下,『日経Automotive Technology』2010年3月号に掲載
図1 日産自動車の新型「フーガ」
(a)後席の空調の吹き出し口。(b)後席用の空調ダクトに発泡樹脂を採用した。
図2 トヨタ自動車のミニバン「アルファード」
(a)車両。(b)後席(2列目、3列目)用の空調ダクトに発泡樹脂を採用した。