世界でコモディティー化する
高機能端末

スマートフォンの普及は携帯電話機の設計やビジネスを大きく変える。既存の端末メーカーだけでなく,新規メーカーも参入し始めている。高機能端末のコモディティー化が世界中で進みそうだ。世界で大競争時代が幕を上げる。

『日経エレクトロニクス』2010年1月25日号より一部掲載

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最新スマートフォン図鑑

 スマートフォンの流行は,携帯電話機の開発形態を多様化した。大きく分類すると,(1)端末メーカーの独自プラットフォームを利用する,(2)携帯電話事業者が主体となって開発する,(3)オープンなプラットフォームを利用する,(4)オープンなプラットフォームを携帯電話事業者の独自サービスに合わせて拡張する──の四つになる。

『日経エレクトロニクス』2010年1月25日号より一部掲載

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第1部<新しいルール>
誰もが作るスマートフォン
価格低下の波を越えて

世界の携帯電話機市場は,いわゆる「スマートフォン」の話題で持ちきりだ。高機能な端末を開発しやすい環境が整うことで,端末メーカー間の競争は激化する。新たなルールの下で競うスマートフォン時代に,誰が覇者となるのか。その争いが始まった。

大競争が始まる

 「これは『スーパーフォン』だ。もはや『スマートフォン』ではない」──。米国時間の2010年1月5日に開催した発表会で,米Google Inc.は同社として初めて自社ブランドで販売する端末「Nexus One」を,こう自画自賛した。

 Nexus OneはGoogle社の携帯電話機向けソフトウエア・プラットフォーム「Android」の最新版(バージョン2.1)を搭載した端末である。企画とソフトウエア開発,販売はGoogle社,端末の設計と製造は台湾High Tech Computer Corp.(HTC社)が担当するという,いわゆる水平分業体制で市場に投入される。

 従来の常識では「超」が付く高機能な端末をソフトウエア企業が自社ブランドで販売するという事実は,携帯電話機市場を取り巻く環境の激変を物語る。端末の基本設計の大半が標準化され,企画・設計・製造の水平分業化が当たり前になる時代の幕開けである。

 つまり,これまで端末メーカーが常識ととらえてきたルールが崩壊するのだ。これは,海外市場の厚い壁に跳ね返されてきた国内の端末メーカーにとって,巻き返しの千載一遇のチャンスでもある。新しいルールの下での覇者をめぐる争いの号砲が鳴った。

『日経エレクトロニクス』2010年1月25日号より一部掲載

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第2部<端末の将来像>
標準品を使いこなし
新たなユーザー体験を目指す

標準的なソフトウエア・プラットフォームの整備は,端末開発に変化をもたらす。部品の選択や回路設計から機能の選択やソフトウエアに開発の軸が移る。端末の使い勝手やユーザー体験(UX)を向上させる競争になりそうだ。

水平分業型と日本型のいいところを取る

 携帯電話機メーカー各社はこれまで,主に最先端の電子部品を端末に搭載することで新たな機能やユーザー体験(UX:user experience)を実現し,他社との差異化を図ってきた。しかし現在,ディスプレイやカメラといった部品の性能は一定の水準を超え,Bluetoothや無線LAN,GPSといった通信機能,タッチ・センサや加速度センサなどのセンサ類もひと通り載せられている。薄型化や軽量化も行き着き,ハードウエアだけによる差異化の余地は少なくなっている。

 第1部で見たように,米Google Inc.の携帯電話機向けソフトウエア・プラットフォームである「Android」の登場は,スマートフォンをはじめとする高機能端末が標準的な存在になり,しかもそれを誰もが開発できる環境を整えた。この環境変化は,端末開発の方向性を大きく変えるだろう。

 開発コストの観点から見て,端末メーカーが標準プラットフォームを採用するのは必然となる。生き残るためには,標準プラットフォームを活用しつつ,付加価値を生み出す方法論を早急に生み出す必要がある。

 標準プラットフォームの採用を前提に,標準品のソフトウエアやハードウエアを利用して大量生産する単純な水平分業型の開発モデルでは,コスト競争に陥るのは目に見えている。とはいえ,携帯電話事業者の要望に合わせて専用のソフトウエアや端末設計が個別に必要となる日本型の開発モデルでは,端末メーカーの開発負担が大きくなってしまう。つまりこれら二つの開発モデルの中間のどこかが解になる。

『日経エレクトロニクス』2010年1月25日号より一部掲載

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